分析初心者のためのHPLC基礎講座
始めに、ガスクロマトグラフィー基礎をお読み頂いた方が、よりご理解頂けると思います。
 
液体クロマトグラフの原理・特徴

  ガス
クロマトグラフ
(GC)
液体
クロマトグラフ
(LC)
移動相 気体 液体
サンプル制限 揮発性
熱安定性
殆どなし
分解能 高い GCより劣る
 
 
1906年にロシアの科学者ツウェットは植物の葉から抽出した色素を分析するために、炭酸カルシウムを詰めたガラス管の上に抽出した色素を置いて、石油エーテルを上から流し続けました。
ツウェットの場合、色素成分を分離させるために使った、炭酸カルシウムに相当するものを固定相(充填剤)、石油エーテルに相当するものを移動相といいます。色素(試料)は、石油エーテル(移動相)の流れにより、炭酸カルシウム(固定相)の隙間を流れます。この場合、固定相の隙間に入り込める色素(試料)は、固定相の穴(隙間)に寄り道をしながら移動します。そのため隙間に入ることができず、寄り道をしなかった色素(試料)より、遅れて移動します。このように試料が寄り道をすることを試料が固定相に保持されるといいます。寄り道の度合いにより試料が分離されることになります。その為、分離するには試料と固定相、試料と移動相、移動相と固定相の相互作用が影響することになります。
 
 
 
 
液体ガスクロマトグラフ(LC)は、ガスクロマトグラフ(GC)よりサンプルへの制限が殆どありません。なので、GCでは分析困難な揮発性が不十分な化合物、熱的に不安定な化合物でも分析可能です。一般的にGCでは既知有機化合物の20%程度が分析可能といわれていますが、HPLCではより多くの有機化合物に対して対応可能と考えられています。
 
 
LC原理
高速液体クロマトグラフィー
High Performance Liquid Chromarography(HPLC)

 
1)微小粒子(2mm-10mm)の固定相を充填したカラムを使用し、
移動相を高圧で送液する(ポンプで一般的に定流量)。
2)分離度が高く、分析時間が短い。
3)現在、一般的に液クロ(LC)と呼ばれる方。
低圧液体クロマトグラフィー、オープンチューブクロマトグラフィー

1)比較的大粒径の固定相を充填したカラムを使用し、
移動相を常圧もしくは低圧で送液する。
2)分離度が低く、分析時間も長い。
3)ツウェットが、初めて行ったLC
 
 

 
 

分離方法
 
 
分離モード 内容
分配クロマトグラフィー
移動相と固定相間における試料成分の溶解性の差により分離します。そのため移動相より固定相に溶けやすい成分ほど遅く溶出することになります。固定相の選択の幅はそれほど広くないため移動相の組成やpHを変化させて分離の多様化が必要となります。
イオン交換クロマトグラフィー
固定相に様々なイオン交換体を用い、試料中のイオンと移動相中の溶離イオンとの間で可逆的なイオン交換を行います。試料イオンのイオン交換体への親和性の差や、移動相中の錯形成の差を利用し分離します。代表的な充填剤としてはスチレン?ジビニルベンゼン系の多孔性ポリマービーンズの表面にイオン交換基を導入したものが使われています。
サイズ排除クロマトグラフィー
高分子物質の分離に優れていますが、複雑な多成分を含む試料の分離は困難です。固定相に多孔性粒子を用います。試料成分はその細孔内部への浸透性の差により分離します。細孔の大きさより大きい分子は細孔内部に浸透できず、速く溶出します。 逆に細孔よりも小さな分子は細孔内部まで浸透するため、大きな分子より遅れて溶出します。
 
 

 

分離の改善方法
分配-逆相系における分離の改善
HPLCでは最も広く用いられるこの系において、分離を改善させるために、固定相、移動相及び移動相のグラジエントをどう考慮していけば良いか、紹介します。

固定相
分配クロマトグラフィーの逆相系ではC8(炭素数)やC18といったカラムが多く使われています。C8やC18の充填剤はHPLCで使われる多くの移動相において、適した保持力を持ちます。
固定相では、結合基の疎水性が増すと試料の保持力は高くなります。
例えばC8カラムを使用し、溶出の早い成分の分離がさらに必要な場合にはC18カラムを使用します。
逆にC18カラムを使用し、溶出しにくい疎水性の高い試料がある場合は、C8カラムを使います。
このように目的成分の疎水性によりC8やC18のカラムを使い分け、最適な分離条件に改善します。
 
移動相
逆相系での移動相は、多くの有機溶媒と水の混在した状態や、酸性やアルカリ性の塩溶液との混合状態で使用されます。
移動相の働きは分離する目的の試料成分を固定相との相互作用で溶出させることにあります。
そのため逆相系では、溶離液である有機溶媒の組成が多くなると、ピーク形状がシャープになります。
また試料中にイオン性試料が含まれる場合は、溶離液のpHを調整し、試料のイオン性によりピークの溶出順序を変えることが出来ます。つ まりイオン性試料に対しては緩衝液の塩濃度を上げることにより、溶出をより容易に出来ます。

グラジェント
移動相に一定組成の用いる均一濃度溶離(Isocratic elution)では、固定相に対する保持力が異なる成分の分離の際に長時間要したり、ピークが拡がることがあります。このような場合には、移動相の組成を連続的に変化させる勾配溶離(Gradient elution)用いられます。ピークが拡がってしまう時には、移動相の有機溶媒の組成比を上げ、溶離力を上げていくことにより試料の拡散によるピークの拡がりを抑えたピークを得る事が出来ます。

 

 
 

検出方法
HPLCでは、試料中の各成分の分離はカラムのなかで行われますが、これを目に見える形に変換しなければなりません。検出器はカラムで行われた分離の結果を電気信号として取り出すためのものです。
目的に適した検出器を選ぶ必要があり、UV-VISやDADは、UV吸収をもつ成分にしか検出できず、RIDは、殆ど何でも検出は可能だが、感度が足りない等それぞれの分析に適した検出器があります。
 
名称 別の名称
紫外可視検出器
UV-VIS(Ultra Violet-Visible Detecter)
フォトダイオードアレイ検出器
DAD( Diode Array Detecter)
示差屈折率検出器
RID(Refractive Index Detecter)
電気電導度検出器
CDD(Conductivity Detector Detecter)
蛍光検出器
FLD(Fluorescence Detecter)
電気化学検出器
ECD(Electro Chemical Detecter)
化学発光検出器
CLD(Chemiluminescence Detecter)
旋光度検出器
ORD(Optical Rotation Detecter)
蒸発光散乱検出器
ELSD(Evaporative Light Scattering Detecter)